このブログで何度も書いてますが、東大阪繊維研究所は糸の企画・製造・販売を主業とするエップヤーン有限会社が運営してます。
なのでうちの服の材料となる糸は自社で企画・製造しています。
うちの広告には「Tシャツを糸からオリジナルで作る」とか「糸からオリジナルで作ったセーター」などと書いたりするのですが、この糸を作ることについて「それがいまいち想像できないんですよね~」というお客様が割と多く「具体的にはどんなことをしているんですか?」と時々聞かれるので、ちょっとご説明したいと思います。
「そもそもオリジナリティとは何ぞや?」という哲学的な話から始めると非常にややこしいことになってしまうので、ここでいうオリジナルというのは「自分たちでデザインしたもの」とします。
シルクを除く天然繊維の糸は短いワタを紡(つむ)いで作られます。
紡ぐというのはワタを束ねてねじりながら繋ぎ、長い繊維形状にすることです。
昔は手紡ぎでしたが今は当然ながら機械で紡いでいて、工業的に生産された糸のことを紡績糸(ぼうせきし)と呼んでいます。
紡績糸は大量生産品なので、ある程度決められた規格の中で作られています。
ウールは1キログラムの重量で1,000メートルの長さを持つ糸が1番手とされていて、1キログラムで2,000メートルあれば2番手となります。
コットンなら1ポンドの重量で840ヤードの長さを持つ糸を1番手と定められていて、ウールと同じく1ポンドで1,680ヤードだと2番手になります。
コットンは主に10の倍数の糸番手で製造することが多く、10番、20番、30番と続いて80番くらいまでは割と定番的に市場に流通しています。
これらの糸を2本撚り合わせたら双糸(そうし)、3本撚れば三子(みこ)という呼び方になります。
この定番的な番手の綿糸を双糸や三子に撚ったものはいろんな糸屋さんが販売しているので、これはもちろん私たちのオリジナルではありません。
うちがオリジナルで糸を作っているというのは、この定番糸を様々な組み合わせで撚って作った糸のことになります。
例えば今年の冬に発売するリネンウールセーターの糸は麻番手60番のリネンを3色別々の色に染めて撚り合わせた3色ミックスの糸を作り、それに対して毛番手48番のウールを双糸にしたものを2色撚り合わせて、このウールと最初のリネン3色ミックスを撚り合わせるという作り方をしています。
構造を書くと(リネン60/3LEA)×(ウール2/48x2NM)となります。
なかなか複雑でしょ?
もちろんのこと、こんなややこしい構造でも最終的にはゼロトルクに仕上げるので、出来上がったニットはご家庭で洗濯していただけます。
リネンで3色ミックスの糸を作り~みたいにサラッと書いてますが、この時に1メートルあたり何回転で撚り合わせてミックスするかということも、ニットの風合いを決定づけるとても重要な要素になります。
撚りを多く入れればシャキッと硬くなるし、少なく入れれば柔らかでふんわりします。
つまり、最終的にどんな服にしたいかイメージして、それに合うように糸に撚りをかけていくわけです。
ウールについても同じです。
48番手の双糸をさらに2本撚り合わせる。
この時に最初に双糸にする段階で2色合わせるのと、後の工程で2色合わせるのでは色の出方が違ってきます。
生地の柔らかさもそうですが、色のトーンやミックス調の感じをイメージして、それを表現するために工程を決める。
どんな色をどんな風に混ぜればイメージ通りになるかは実際に作ってみないとわからない場合が多いので、私たちは1つの服を商品化するために素材となる糸の試作を何度も何度も繰り返します。
デザイナーと一緒になって「このデザインならこんな肌触りの素材が合うよね」とか「このシルエットでこんな色ならめちゃくちゃカッコいいニットになりそう!」とか言いながら素材を作りこんでいきます。
まさに素材から作りこんで服を生み出しているわけです。
この時に大事なことは「どんな服ならお客さんは喜んでくれるだろうか」ということを一番に考えて服をデザインし、それを実現するために糸をデザインするということです。
糸が先に出来るのではなく、作りたい服のため必要な糸を作るということです。
定番糸を生かした生地を作り、その生地を生かした服作りをするのもありだと思います。
もちろん市販の生地を買ってきて服を作ることを否定するわけでもありません。
あくまでも私たちの服作りのやり方として、まず先に「どんな服があったら良いか?」を考えて、そこから必要な糸を作っているというだけです。
目的や必要な要素が決まっている方が素材や加工方法を決めやすいため、糸作りを職業としている自分たちにとっては実際その方がやりやすいのです。
服を糸からオリジナルで作るというと「糸屋さんがつくる独特な糸で作った服」と思われるかもしれませんが、そういうことではないのです。
ちなみにうちの定番Tシャツに使われている糸は、紡績の段階からオリジナルです。
紡績メーカーさんに依頼して、当社の指定する銘柄のオーガニック超長綿を使って72番手という特殊な番手にしてもらっています。
さらには精紡交撚という方法で糸を均一に整え、コンパクトスピニングという加工で糸の毛羽を抑え込んで紡績してもらっています。
この秋に発売予定の定番長袖HOFI-023Rの新色では、この糸を3色別々に染めて撚り合わせてミックスしたメランジカラーも作っています。
これは、まだまだ日中の暑さが残る10月や11月あたりはコットン100%の長袖を着るだろうけれど、秋の気分も楽しんでもらいたいのでより深みのある色調を出そう、と考えて企画しました。
このように、東大阪繊維研究所では服を作るためにオリジナルの糸から作っています。
基本的に自社内の設備で作っているので、実際に糸を加工しているところが見てみたい!という方はぜひご来店いただいた際にスタッフにお申し付けください。
店舗の1階と3階が工場になっていますので、工場を見学していただくことも可能です。
さて、
糸をオリジナルで作るという話を最後にまとめると、
「作りたい服があるから、そのために必要な糸を作っている」
ということにつきます。
ダラダラ書いてしまいましたが、結論はめっちゃシンプルでした。。。スンマセン。