つい先日繊研新聞の方に取材していただく機会があり、その流れで繊研新聞のスレッズをチラッと閲覧して以来お勧め投稿がいっぱい流れてきます。
今更ですが、業界の情報をこんなにも沢山発信しているのかと驚きますね。
本当に頭が下がります。
さて、その中で今朝流れてきたのがこちら。
8月の繊維倒産 負債総額は20年5月に次ぐ150億円 | 繊研新聞
いやはや厳しい。。。
倒産件数もさることながら、この手の話はいつも負債の額に驚きます。
直近の売上が5億で負債が12億なんて話はざらにあります。
そういう記事を見るたびに「その状況でどうやって資金繰りをするのだろうか。。。」と思うし、自分が当事者になったことを想像して立ち眩みしそうになります。
今回の記事によると倒産件数自体は前月比11件減、前年度比1件増で、負債総額が前年度比225%増ということらしいです。
コロナによる特別枠融資の返済猶予期間が過ぎた2023年後半から去年前半にかけてが倒産のピークかなと思っていたのですが、それ以降もまだまだしんどい状況が続いているということですね。
多くの企業がいわゆるコロナ融資を受けて何とか立て直そうと頑張っているのですが、猶予はあくまでも時間稼ぎであって、その間も業績が下がり続けてしまったら結局返済が始まった時にはコロナ前よりも資金繰りが厳しくなってしまうわけです。
うちがお付き合いしている加工場さんとも業界の話はしょっちゅうしていて、こないだはどこの染色工場が廃業したとか、どこの紡績工場が閉鎖になったとか、そんな話はまだまだ多いです。
スレッズを見ていると、小規模のアパレルや縫製工場を立ち上げる人、個人で請負の縫製を始めた人の投稿をたくさん見かけます。
これからはこんな風に母体の小さな物づくりが主流になってくるよなぁと思う部分はあるのですが、原料屋としてはちょっと複雑な心境になります。
自分たちの夢や理想を実現するためにブランドや工場をスタートする人たちを応援したい気持ちはもちろんあって、こういう人たちと一緒に日本のモノづくりを発展させられたらとも思います。
しかし規模感がどうしても合わない。
5着10着、いや50着100着程度であっても、それ単体のオーダーだけでは原料屋さんは回りません。
仮にレディスのミドルゲージニットで1着当たり300g程度の糸量が必要だとして、100着で30kgが必要になります。
糸の染色ミニマムは1色あたり50kgなので、たとえ100着を1色展開で作るとしても経済ロットに満たないのです。
縫製品にしても同じことで、例えば長袖のシャツ1枚を作るのに必要尺が1.7mかかるとすると、100着で170mの生地が必要になります。
シャツ地に使う薄手の生地はだいたい1ロール40m~50m程度で、生地の染色加工場ではだいたい1色あたり6反程度がミニマムロットになるので、経済ロットとしての染色ミニマムは1色あたり240m~300mとなります。
仮に100着のシャツを2色展開で販売するとなると、それぞれが85mずつ必要になるわけですが、生地のミニマムロットはそれの約3倍は必要なわけです。
そうなると小規模のブランドでは生地問屋さんが在庫している品番を必要メーター数で購入するしかなく方法がなく、素材や風合いでオリジナリティを追求するということが難しくなってしまうわけです。
この内容は1型の服を100着作る前提で書いてますが、実際のところ個人もしくは小規模アパレルで1型100着も作れるところの方が少ないのではないかと思います。
10着20着で服を作って販売しているというケースもざらにあることでしょう。
そういった人たちが頼りにしている糸や生地の問屋さんや加工場が毎年のように倒産・廃業しているのが日本国内の現実です。
問屋さんや加工場は定番的なものだけでなく、各社独自の面白い商品を毎年作っています。
けれどもそれは開発に資金を投資できる余裕があればこそですし、そういった企業が無くなってくると、マーケットは売れ筋や定番を中心としたより均一的なものばかりになるでしょう。
これから服を作っていきたい人たちにはもっといろんな生地を使ってもらいたいし、いろんな素材にも触れてもらいたい。
けれどもそれが年々難しくなっています。
原料屋としてのジレンマがより浮き彫りになってきています。。。