リネンについてちょっと細かい話をします

当社の主力商品はリネン糸です。

今の世の中、調べものの答えはウィキペディアなどに書いてあるので、ここでいまさら解説を書く必要もないのかとも思います。

けれども、いざ調べてみようと思ったらネット上で大した情報も得られなかったので、一先ず自分の知っていることを備忘録ついでに書いておこうと思います。

そもそもリネンという言葉は素材の名前ではなく加工品の名前をあらわしています。たとえば織物や紡績糸のことですね。

加工前の植物としての名前はflax(フラックス)。リネン糸は原料段階では本来フラックスと呼ぶべきものです。

日本ではリネンを亜麻と呼び原料段階の植物も亜麻と呼びます。

このあたりは日本語と外国語の違いでよくある感じですね。

しかし、この呼称の違いが意外と大事だったりします。

「フレンチリネン」、「ベルギーリネン」などの言葉のイメージと実情にズレが生じるからです。

英語圏でフレンチリネンという言葉を使う場合それはフランスで紡績や織布されたフラックスであることを意味しています。ベルギーリネンも然り。最終的にリネンに加工した国名を冠につけます。

フレンチリネンやベルギーリネンという言葉は昨今色んなところで見かけますが、ほとんどは実際のところ中国で紡績や織布されています。これは本来チャイナリネンと呼ぶべきです。

つまり、フランスで収穫されたフラックスを中国で紡績した場合はチャイナリネンと呼ぶ方が本来の言葉の意味に則っているわけです。

リネン糸を輸出しているヨーロッパの国々ではこの点を割ときっちり区別していて、ベルギーリネンはベルギーで紡績や織布されています。

でも日本ではベルギーのフラックスを中国で紡績してインドネシアで編みたて縫製したものも全部ベルギーリネンと表記してしまう。

そうすると自国内でものづくりをしているフランスやベルギーなど欧米のサプライヤーは、自国の商品であることをアピールする場合にコストの上でかなり不利になってしまうわけです。

逆のこともあります。

アイリッシュリネンという言葉が高級リネン製品に使われているところをたまに見かけます。

しかし、アイルランドにはフラックスの畑もリネンの紡績メーカーもありません。

では何がアイリッシュリネンなのかというと、アイルランドで染めてアイルランドで織布しているからアイリッシュリネンなわけです。

これは表記上正しい。

しかし、その実使われている糸は中国や東欧辺りから輸入されたものがほとんどだったりします。

他にも本社がアイルランドでその紡績工場が南アフリカの場合もやっぱりアイリッシュリネンと銘打って売られていたりする。これは南アフリカリネンです。

ファッションの業界では欧米崇拝主義的なものがいまだに根強くあったりするので、フレンチほにゃららやイタリヤなんちゃらという言葉が大事だったりします。

なので、それらの言葉が使えるなら出来るだけプロモーションに組み込みたいわけです。

中国紡績でも原料がフランスならフレンチリネン、中国原料でも加工がアイルランドならアイリッシュリネン。

ご都合主義という気がしてなりませんがこれが実情。

当社ではこのあたりのことを曖昧にせず、原料がフランスで中国紡績の場合は「フレンチフラックスのチャイナリネンです」とはっきり説明するようにしています。

馬鹿正直を誇るつもりでそうするわけではないです。

当社ではフランスで紡績しているフレンチリネンメーカーの糸も扱っており、彼らの商品がフランスで紡績されていないフレンチリネンと混同されることを避けたいからです。

もっと言えば中国で紡績されたリネンも非常にクオリティが高く、中国製であることを恥じる必要もないと感じているからです。

細かい言葉の用法の話ですが、きっちり説明した方が皆さん納得できるし安心して使えるはずで、それが何より大事なことだと思っています。

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