撚り杢を作るときに気を付けていること。

皆さんが普段目にしている物体の色というのは光が反射されたものです。

唐突に何を言い出したのかと言いますと、今回は撚り杢の色を綺麗に混ぜるときに私が注意していることについてのお話をしたく、そのために必要な予備知識としての発色の話です。

赤色のもの、例えばリンゴや郵便ポストや広島カープ、これらはそれそのものが赤いのではなく光を受けた結果赤い色だけを反射し、その他の光源を吸収しているために私たちの目には赤く見えます。

青も黄色も同じくそれらの色を反射してそれ以外を吸収している。

なので、光源の無い真っ暗な場所に行くとすべてのものが黒く見えるわけです。

それに対してガラス窓など透明のものはどうなっているかというと、光を吸収せずに透過させています。

透過した光源はガラスの向こう側の物体に反射して視界に戻ってくるので結果的に透けて見えます。

洋服の色選びに際して購買者が気にされることとして色の透けの問題があります。

夏場に白のブラウスや白のパンツを着用する際、下着が透けるのが気になるというやつですね。

この白というのがなかなか厄介で、白だけはすべての光源を反射した結果見えている色なので白い物体は光を吸収せずに跳ね返してしまう物質だということです。

たとえ高密度で織られた生地でも拡大すれば凹凸があり薄い部分があるし、それらを織っている糸も拡大していくと細い繊維の収束体です。

つまりは極小サイズの隙間だらけということです。

白くて薄いブラウス地などの生地に当たった光源が生地内部で乱反射し、接触している内側の物体にまで届いて跳ね返ってしまい結果的に透けて見えてしまうわけです。

虹を思い浮かべていただくとわかりやすいですが、光には赤や青や黄色などいろんな色の光源がありこれらを可視光線と呼びます。

それ以外に紫外線や赤外線など人間の目では色彩を感知できない不可視光線というものもあります。

ちなみにシャコとかミツバチなんかはこのあたりの光源も感知するらしいです。

目の前にある物体がこの可視光線のどの色を反射してどの色を吸収するか、というのが我々の目に発色として認識されているわけです。

前置きが長くなってしまい申し訳ありません。

撚り杢の話。

撚り杢というのは複数の異なる色の糸を撚り合わせて作る複合色の糸です。

紅白しめ縄みたいなやつですね。

この撚り杢の色を組み合わせるときに、先ほど述べた白の特性がとても重要になります。

例えば赤、青、白のトリコロールカラーで撚り杢を組んだとします。

赤の糸は青色を透過しないし逆もそうなので色ははっきり分かれます。

しかし白の糸は赤を通すし青も通す。

そうなると3色の撚り杢を作った場合、赤、青、白が強調されて出る部分と白を通して赤が透けた結果薄いピンクに見える部分と青が透けて薄い水色に見える部分が出来てきます。

結果的に3色の混ぜ合わせではなくもっと多くの色の要素が混ざり合ってより深みのある色が得られたりするわけです。

このエフェクトを利用して白に適度に透ける中濃色から淡色の色を組み合わせていくと、非常にきれいに色が混ざり合います。

またリネンのように糸に凹凸があって繊維に隙間の多い糸を撚り杢にすると色の透過性も高く色が混ざりやすいので絵具を荒く混ぜ合わせたようなきれいなメランジトーンが得られるわけです。

逆に糸が太くて光を通しにくい素材の場合、それぞれの色がはっきりと分かれるのでよりエッジの聞いた撚り杢調が表現できます。

また光の透過性の低い濃色どうしの組み合わせで撚り杢を組むとはっきりとした杢調が得られます。

このように、撚り杢の配色を決める際に光の特性を理解しておくと、より深い表現ができたり狙った通りの色を表現するのに役立ちますよというお話でした。

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