HOFI-012 リネンコットンモンスターオンスTシャツを発売しました!-上質な素材を愉しむための大人のTシャツ開発秘話。リネンという気難しい糸をコントロールする技術-

新商品HOFI-012リネンコットンモンスターオンスTシャツを先月末から発売開始しました。

ぜひオンラインストアをチェックしてみてください。

さて、

以前からチラホラとこの商品をご紹介してきましたが、ようやく発売の運びとなりました。

この1枚を世に出す為に今回もかなり色んな壁を越えてきたので、なかなか感慨深いです。

このブログで何度も書いてきましたが東大阪繊維研究所を運営するエップヤーン有限会社は工業用のニット糸を企画・製造・販売している、いわゆる糸屋さんです。

中でも主力素材はリネン糸。

リネンの光沢や張りを生かす染色のノウハウ、カラフルな在庫バリエーション、上質な原料の仕入ルートなど様々な強みを生かして質の高いリネンニット糸をご提供しています。

リネン糸でニット編んだことのある方や、リネンのセーターなどを持っておられる方は製品の歪みや型崩れを経験したことがあるかもしれません。

幸運にも今までそういうことがなかったという方には伝わりにくいのですが、リネンという糸には製品を歪ませてしまう「斜行(しゃこう)」という非常に厄介な特性があります。

この斜行という現象をコントロールするには「撚糸(ねんし)」という糸加工の技術がある一定水準を超えていないといけません。

エップヤーン有限会社のウェブサイトにも書いているのですが、私たちはリネンの専門家であり、かつ撚糸の専門家でもあります。

これはすなわちリネンの斜行をコントロールできるということを意味しています。

今回のリネンコットンモンスターオンスTシャツを作るにあたって、私たちは今まで培ってきたこのリネンの斜行を止める撚糸技術をフルに生かして、頑丈かつ型崩れしない極厚の生地を開発するところから始めました。

斜行を止める技術と言っても特許が取れるような特殊な技術ではなく、糸の斜行特性を見極めてただひたすら厳密に撚糸回数を設定するという作業です。

斜行特性を見極めるとはどういうことか。

普通の糸の場合は糸を撚り合わせて糸のねじれがピタッと止まるところを見つければそれで終了です。

しかしリネンの場合それでは十分ではありません。

リネンという糸の厄介なところは、生地の目を詰めて編むほど生地が左下がりに歪んでいくという特性があることです。

この特性を理解して、生地が仕上がった時の目の詰まり具合に合わせて糸のねじれ具合を調整しなければいけません。

目を詰めると左下がりに曲がるということなので、糸そのものは生地を右下がりに曲げるように撚糸する必要があるのです。

これが非常に難しい。

一般的なセーター用の糸作りでは生地が右にも左にも曲がらないようにピタッと撚糸回数を合わせることを求められます。

簡単に書きましたが、この撚糸回数をピタッと合わせるということ自体、実はけっこう難易度が高いとされています。

けれども、そこは私たちにとっては特に難しいことではなく、過去20年間に積み上げてきた18,000回以上の撚糸試験データがあるので、それに基づいてサクッと数値を決めるだけで出来ます。

しかし、私たちが今回目指した生地はその名のとおりモンスター級に極厚のものなので、編み目を思いっきり詰める必要があります。

編み目を限界まで詰めた状態で生地を安定させるためには、普通のニットを編んだときに斜行がピタッと止まる撚糸回数をまず見つけ出し、その後モンスターオンス生地の目の詰め具合によって発生する左下がりの角度と拮抗するように、生地を右下がりに曲げるような撚り回数を割り出してやる必要があります。

つまり、わざわざ右下がりに斜行する糸を作らなければいけないのです。

簡単に言うと撚り回数を適度に増やしてあげる必要があります。

しかし、この撚り回数を増やしすぎるとこれまた生地は歪んでしまいます。

あくまでもモンスターオンス生地を編んで仕上げたときにピタッと曲がりが止まるように、糸の撚りバランスを「最適に崩してやる」のです。

さらに、

リネンのニット生地は長年使っていくうちにさらに少しずつ左下がりに曲がっていくという特性もあります。

この曲がりはある程度のところで止まるのですが、それでも最終的にパッと見で製品の歪みが分かるほどの曲がりです。

この原因についての細かい説明は割愛しますが、何せしばらくのうちは使えば使うほど曲がっていってそのうち止まると思ってください。

私たちのモンスターオンスTシャツはガンガン着てガンガン洗ってください!と宣伝しているものです。

なので、この少しずつ発生する曲がりも計算に入れなければいけません。

ある程度着てもらったところで落ち着き、ちょうどまっすぐになるように糸の撚糸回数を設定するのです。

これ、サクサクと書いてますがめっちゃ難しいんです。

こんなことできるは日本でもうちの会社だけなんじゃないのか?

と本気で思っています。

このTシャツの開発秘話は他にも沢山あるのですが、今回は最大の特徴であるリネンの斜行特性について書いてみました。

またボチボチ色んなことを書いていきたいと思います。

ところで、

ここまで書いてきて今更こんなことを言うのもなんですが、技術や物性のことはともかくこのTシャツは色もデザインもめっちゃカッコいいんで、まずはそこを見てもらいたいです。

Tシャツを着ているのにラフな印象が全然なくて、凄く洗練された大人のカッコよさが出ます。

肌触りもめっちゃ気持ちいいです。

何はともあれ、とにかく一度着てみてください。

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