共通の価値観が見つかる瞬間が共同開発の盛り上がりどころですね。

昨年の夏ごろ、とある加工場の社長さんから突然メールを頂きました。

内容は「何か一緒に仕事をしましょう」というストレートなメッセージ。

まずはお話をうかがってみようと思い、すぐにメールを返信してお会いしました。

最初はご来社いただきその後先方の工場に伺い何度かやり取りするなかで、どうやらお互い繊維の産業に従事していながら活動している業界がわりと離れていることが分かってきて、これは面白いお付き合いが出来そうだなと感じました。

ひとたび面白そうと感じるとその後はとんとん拍子で話が進むもので、どんな糸を作ってどの販路に紹介していくかも早い段階でイメージ出来ました。

しかし新規の共同開発というのはここからが難しい。

何が難しいって、抽象的なことも含めて具現化したいことを自分以外の人と共有することが難しい。

硬くしたい、柔らかくしたい、サラッとさせたい、コシが足りない、シャリ感が欲しい、見た目をすっきりさせたい、いざ言葉にしてみたら繊維製品に対する表現というのは基準のはっきりしないことばかりなので、開発パートナーと情報や感度を共有するために曖昧なことに対して一つ一つきちんとした基準を設けていかなければいけない。

試作には時間やコストや手間がかかるので出来るだけ試作回数を少なくして求める品質水準に到達させたいけれど、お互いの感覚が近いかどうか確かめるためにはいくつかの試作品を作成して評価し合わなければいけない。

相手の持っている設備やノウハウについてこちらが知らないことも多く、中には秘匿性の高い情報もあるだろうからどこまで聞いてよいのかというのも迷うし、それゆえにどの数字を何パーセントいじってくださいというような具体的で相手側が分かり易い説明がなかなか出来ないことも多い。

長年お付き合いの続いている加工場さんなら言えるわがままも初めましての人にはなかなか言いづらく、あまり迷惑をかけたくないと思うので色々と注文をつけることに遠慮してしまうけれど、いち早く完成させたいからこそ結局色々伝えてしまうというジレンマもある。

そうやって色々気にかけながらも、何か新しい商品を開発して新しいビジネスを生み出すという共通の目的があるので、そこを信用して言うべきことはしっかり伝える。

そんな風に少しずつ前に進めていきながら、あーだこーだと打ち合わせして試作を重ねるうちに、「これ良いんじゃない?!」というものが出来てくると、とてもテンションが上がります。

「そうですそうです、これですよ!」

「なるほどこれですか~」

というような瞬間に生まれる共通の価値観が次のアクションへの原動力になります。

改善点が明確に見えると次の試作のスピードも早くなりますし、パートナーの動きが早くなるとこちらもそれに応えるべく早急にリアクションするようになる、という相乗効果で状況がどんどん進捗していきます。

当社には試作用の設備があるがゆえに社内にこもって身内だけで商品開発に取り組むことも多いので、今回のように外部の人と価値観を共有しながら新しい商品を作っていくということはとても貴重な体験になります。

今回はそういう貴重な体験の機会を先方からのお声がけによって与えて頂けて幸運でした。

結果的になかなか手ごたえのある商品が出来上がってきています。

おそらく7月中ごろには資料がまとまると思いますので、その際はこのブログでもご紹介したいと思います。

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