機能性繊維に関する問合せが増えてはいるのですが。。。

先日あるお客様から「精神をリラックスさせる効果のある繊維を探しているのですが、取り扱いはありますか?」というお問い合わせを頂きました。

私自身、いわゆるスピリチュアル系のお話には興味を持っていないので、これは適当に受け流すべき話かなと思いながらお話をうかがっていると、どうやら先方は割りと真剣にその手の素材を探しておられるらしい。

なんなら既にそういった商品を展開しているアパレル企業があるらしく、その商戦に自分たちも乗り遅れたくないということでした。

「うちでは取り扱っておりません」といってしまえばそれまでなのですが、日ごろから親しくしている若者だったので無碍に切り捨てる気にもなれず、そもそもどういうメカニズムで精神をリラックスさせるつもりなのか逆に聞いてみると、繊維にストレスを軽減するような成分を練り込んで、それでニットを作るというお話でした。

これを言ってしまうと話がずれてしまうかもしれませんが、仕事で抱えたストレスは仕事でしか解決できないだろうし、人間関係で抱えた不安は人間関係を改善しないと解決できないのではないでしょうか。

仕事でついイライラしてしまう人が、リラックス成分を練り込んだセーター着ることによって精神の安定を取り戻すという場面がちょっと想像できなかったので、「もしも精神を安定させる成分なるものが存在するならば、サプリメントなんかのメーカーがいち早く商品化するはず。大手薬品メーカーがそういった商品を販売していないのに、繊維業界だけにそんなものが突発的に登場することは考えにくいのじゃないか」と伝えてこのトピックスへのご協力はやんわりとお断りしました。

そもそも繊維に何かしらの効能をもたらす成分を練り込んだとして、アウターのニットを作ってしまってはその効能はなかなか人体に届きにくいのではないかと思います。少なくとも肌着などのインナーウェアの方がまだ説得力があるのではないでしょうか。

以前このブログでも書いたことなのですが、かつて取引先の方に「ホールガーメントという無縫製のニットは製品に縫い目が無いから着心地がよくてストレスを感じにくい」というようなことを言われたことがあり、自分自身ニットの縫製部分にストレスを感じたことが無かったので、「世の中にはそこまで神経質な人がいるもんなんだな」と漠然と思った記憶があります。

いずれにしても、ビジネスにおいてヒット商品を作る条件は「問題解決」だとよく言われることなので、この世の中ストレスが大きな問題になっていて、あの手この手でそれを解決しようとしている人たちがいるのだということですね。

そのほかにも最近とある客先で水素水の話題が取り上げられたことがありましたが、これもいったいどういうメカニズムで健康にプラスを生むのか私自身よく分かっていません。

チラッと調べてみたら「水に溶け込んだ水素が老化促進物質である活性酸素を体外に排出する手助けをする」ということらしいです。

たしかに水素は酸素と結びつき易いですね。ちなみに水素と酸素が結合したものの代表選手がH2O、つまり水です。

しかしながら、水素なんて水に非常に溶けにくいものなので、仮に従来比で何倍もの濃度で溶かし込んだとしても元々がほとんど入っていないので結局その濃度はたかが知れいるでしょうし、その水素が体内の消化器官を経由して血液に取り込まれ、たまたま体内の活性酸素とばっちりのタイミングで反応して体外に排出される確率なんてとてつもなく低いのではないでしょうか。

これ以外にもマイナスイオンがヒーリング効果を持っているとか、ゲルマニウムが体を活性化するとか、化学的に全く根拠の無いものが世の中には時々登場していつの間にやら消滅していくということが割りと良くありますね。

そういった非科学的な機能を謳い文句にしたような繊維製品にいったいどこまでの市場性があるのでしょうか。

占いの市場がそれなりにあるところをみると、案外馬鹿に出来ないものなのかもしれませんが。。。

誤解の無い様に書いておきたいことですが、私自身は撥水性能や赤外線や紫外線など光線の反射率・透過率を上げ下げするような機能性繊維については化学的に十分検証可能だと考えておりますし、洗濯機で洗濯しても縮まないというのも立派な機能だと思っているので、機能性繊維全体に懐疑的なわけではありません。

ただ、非科学的なものが時々こっそりそれらに紛れ込んでくるため、自分自身が騙されないように、また客先の方々を騙すようなことにならないよう気をつけないといけないなと思っております。

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