洋服作りにおける日本製の現状はかなり厳しい。。。という話。

お盆休みですね!

みなさまはいかがお過ごしですか?

私はというと、嫁さんと子供たちが里帰り中なので、一人で家の大掃除をしたり会社に来て書類整理しつつ久しぶりにゆっくりと過ごしております。

会社での用事もボチボチ片付いたので、ブログでも書いてみるかな~と思ってテーマを考えたのですが、あんまり楽しい話題は見つからなかったですね。

先日たまたまネットで拾った資料がありまして、まずはそのリンクを貼ってみます。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_production_area/pdf/001_04_00.pdf

昨年10月に経済産業省が発行したレポートです。

大まかな内容をザクっとまとめると、

繊維産地は川上から川下までみんな弱体化してるから、弱っている者たちでサプライチェーンを作ってチームで強くなれ

というような提言ですね。

まぁ言ってることは分かります。

日本のモノづくりの弱点は中小零細の分業制による生産性の低さにある、みたいな話はそこかしこで聞くので、この提言もそのあたりを踏まえてのことでしょう。

それにしても数字やグラフで突きつけられる現実がかなり厳しい。

繊維工業の事業所数が2005年から2020年の間に半分以下になった、とある。

繊維工業というのは紡績工場とか撚糸工場、染色工場、製織工場やニット工場、縫製工場などのことですね。

半分以下という優しい書き方をしていますが、2005年に23,082あった事業所が2020年には9,448に減っている。

概ね60%減ですよ。

しかも2020年の時点でこれです。

2025年の時点だともっとえらいことになってるはずです。

日本製の糸とか、日本製の生地なんてものはあと10年もしないうちに無くなるんじゃないの?という感じですね。

実際のところ、アパレルアイテムの輸入比率は98.5%なので、数量ベースで国内生産の比率は1.5%ほどになってるわけです。

けど金額ベースだと輸入が74.5%ということなので、国産はまだ25.5%ほどあるということです。

数量が全体の1.5%なのに金額ベースで25.5%あるということは、計算すると平均単価で海外製よりも22.5倍高いことになるので、やっぱり日本製ってめちゃくちゃ高いんやなぁと思いました。

と他人事のように書いてはいけませんね。

うちも1着当たり1万円~2万円ほどのTシャツを販売しているので、もちろん高価なものを販売している自覚はあります。

当然ながら品質でそれに見合う価値をご提供している自負もありますが、価値というのは使う人が決めることなのでこればかりは手前味噌は良くないですね。

それはともかく、そんなに高いお金をいただいているというのに、事業者は減る一方。

これが現実です。

私自身、この資料を読み進めていって一番衝撃だったのは11ページのグラフ。

化学、金属、ゴム、食料品、、、あらゆる分野と比較しても繊維工業の事業者と事業所の減少率が高い。

取引している金融機関の営業さんたちと話していると、他の産業分野もかなり良くないように聞くのですが、それどころではない勢いで繊維の状況が悪い。

デジタル化でかなりしんどいと言われている印刷業よりも状況が悪い。

こうなってくると、なぜ日本国内で繊維なんてやってるんですか?という感じですね。

まさに絶滅危惧種です。

しかしながらうちのTシャツは、紡績糸こそ輸入品ですが、それ以降の撚糸、染色、生地の編みたて、縫製の工程をすべて日本国内で行っています。

正直なところ、海外の工場で製品を作りませんか?というオファーもたまにありますが、それをやるつもりは全くありません。

なぜか?

それは仲間内で作る方が楽しいからです。

コストだけ考えれば海外である程度作りこんだものを輸入して販売するメリットはもちろんありますが、それだと仕事が面白くない。

仲間同士でしょっちゅう話し合って、素材から作りこんでいく。

各々にモノづくりの理想形があって、時々それらが相反するときもあります。

けど、みんなの目指すところがバッチリ一致した時にはめちゃくちゃクオリティの高いものが出来上がる。

そういったものを生み出した時の快感たるや言葉でうまく説明できないものがあります。

そういうモノづくりから得られる快楽のような、心の栄養みたいなものがないと仕事はやってられないのです。

アイデアと設計図だけ中間事業者さんに渡して、あとは出来上がりを待つ。

そしてそれらをひたすら売る。

私自身はそういう仕事で喜びを得られない人間なので、しんどいながら日本国内で服を作っているのです。

そういった意味では、私たちも弱小ながらサプライチェーンを形成していると言えなくもないわけですが。。。

それはおそらく経済産業省が望む規模に対してかなり小さいものなので、サプライチェーンと呼んでいいものかどうか、といったところです。

それはともかく、

ここまで事業所が減った中でも生き残っている人たちは、何かしら強みを持った人たちです。

もちろんうちの会社だって、糸のよじれをピタッと止めて洗濯や着用に対する生地の安定性を高める「ゼロトルク撚糸」の技術を持っています。

糸の撚糸トルクをピタッと止める技術って実はかなり難しいんですよ。

普段あんまりこういう言い方はしないんですが、うちって業界的にまぁまぁすごいことをやってるんです。

多くの糸屋さんがそこを適当にやってて、しょっちゅうトラブルになってます。

日本製だメイドインジャパンだとさんざん言ってるけど、どこが強みなのかよく分からない業者さんを時々見かけますが、うちのTシャツは糸を安定させることで製品を長持ちさせるということをはっきりと謳ってます。

スンマセン、たまにはこのくらいの毒は吐かせてください。

それはさておいて、

実際にうちのTシャツ作りに関わってくれている染色や編みたて、縫製などの工場さんは全員めちゃくちゃ良い仕事をするところばかりです。

一度でもそういうチームで最高の物を生み出す経験をしてしまうと、もう病みつきになってやめられなくなってしまうんですよ。

この強いチームを維持して、これからもより良い服を生み出していくために何をしなければいけないか。

これからも楽しくモノづくりをしていくために、まずなにをしなければいけないか。

それについては普段から目いっぱい考えていますが、このお盆休みにもう少し頭を整理して早々に次の挑戦にむけて動き出したいと思います。

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