ファンシーヤーンの作り方の基本中の基本。

関西地方も日中から少し肌寒くなってきまして、いよいよ冬も近づいてきたかなと感じる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

つい先日、とある取引先の若者(男前)から「最近のエップヤーンのブログは内容が硬くシリアスすぎる。以前はもっと砕けた雰囲気で気軽に読めたのに。」というご意見を頂きましたので、今回は初心に帰って糸作りの基本のお話を書きたいと思います。

ニット糸の業界にはファンシーヤーンという言葉があります。

日本語で言うと意匠糸(いしょうし)ですが、この言い方は川下の現場ではあまり使われていないので、今回はファンシーヤーンという呼び名の方で統一してご説明します。

このファンシーヤーンという言葉にきちんと決められた定義は無く、概ねストレートな糸ではなく形状変化があって表情に富んだ糸のことを指しています。

ファンシーヤーンのバリエーションは多種多様で、糸の形状に対してブークレ、リング、ノット、ループなどという名前が付くのですが、これまたそれらにきちっとした定義は無く、各メーカーが出来上がった糸の雰囲気に対してある意味適当に名前をつけています。

このファンシーヤーンの作り方の中で、最もポピュラーなものについてご説明したいと思います。

まずは図解

ファンシーヤーンは基本的に、芯糸、浮き糸、押さえ糸という3本の糸のパーツで構成されます。

3本と書きましたが芯糸が2本になっていたり浮き糸が2本になっていたり、とにかく様々な構造で作ることが可能なのですが、ここでは3パーツ各1本の糸で作る基本的な構造を解説します。

図の最上部にトップローラという部品がありまして、これは糸を送り出す役割を果たします。

芯糸と浮き糸はそれぞれ別個のローラーから送り出されて寄り添うように並びます。

このとき芯糸のローラの速さと浮き糸のローラの速さの比率を変えてあげることで、浮き糸にだぶつきを与えてファンシーヤーン特有の形状を作成します。

芯糸の速度1に対して浮き糸の速度を2にすると、浮き糸は芯糸の2倍の量で送り込まれるので糸が寄り添ったときに余ってきます。

余った糸は浮き上がって行き場を失った結果、くるんとカールして輪になります。

そうやってまっすぐな糸とカールした糸が並んだところを別の糸で外側からカバーするように巻いてあげるとファンシーヤーンが出来上がります。

外側から巻くのが押さえ糸で、最後に押さえ糸でカバーしてあげることで、だぶついた浮き糸のカール部分が固定されて糸の形状が安定するわけです。

ここで芯糸のローラと浮き糸のローラの速度比について描いたもうひとつの図を見てください。

芯糸の送り出されるスピードに対して、浮き糸を少しだけ早く送り出せばだぶつきが少なくループの小さな糸ができます。

浮き糸を送る速さを上げるとループは大きくなって、より形状変化に富んだ糸になります。

浮き糸のループが小さなものをブークレヤーン、中くらいのものをループヤーン、大きなものをリングヤーンと呼んだりしますが、大きい小さいは見る人の主観に依存するので、ループの直径が何ミリの場合云々といった細かな定義はありません。

ちなみにこのループをその後カットして糸から毛足が出ているように加工したものが、タムヤーンとかシャギーヤーンといわれるものになります。

今回解説したのは基本中の基本にあたる作り方なので、実際はもっともっと沢山のバリエーションがあって、分類しだすときりがないです。

ですが、ファンシーヤーンといわれる糸の多くがこの芯糸、浮き糸、押さえ糸という3パーツ構造になっていると覚えておけば良いかと思います。

このファンシーヤーンの機械を設定するのが非常に難しく、高い熟練度が必要になるのですがその技術を継承する人も少なく、この設備を持った工場がどんどん廃業していって、、、という話は今回は無しでーす。

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