たまにはコットンのお話。超長綿という言葉の使い方。

いつもリネンの話ばかりを書いておりますが、当社にはコットンの商品もあります。

流通量も圧倒的に多くポピュラーな素材なので、おそらくコットンを扱っていない糸屋さんは無いのではないかと思います。

ゆえに各社の競争も激しく、海外から安い綿糸を輸入してきて価格メリットを打ち出す企業や、珍しい原綿を使って品種のオリジナリティで勝負する企業もあり、各社それぞれにオリジナリティを追求したコットン素材を販売しています。

当社としても独自の企画で展開しているコットン素材がいくつかありまして、主なものはインド原産の超長綿を使用したものとペルー原産の超長綿を使用したものの2品番です。

超長綿とは繊維の長さが35ミリ以上の綿のことを言いますが、この説明というのが非常にあいまいで誤解を生じ安かったりします。

いろんなサイトで超長綿についての説明をみていると「糸に含まれている繊維の平均長が35ミリ以上のもの」という説明が多いように思います。

この超長綿という言葉はICAC(国際綿花諮問委員会)という国際団体によって規定されており、「繊維長が1 3/8インチ以上のものを超長繊維綿と呼ぶ」と規定しているだけです。

つまり綿花に含まれる繊維を一本一本バラバラに分けたときに1 3/8インチ以上のものが超長綿ですよということを言っているだけで、紡績された糸一本の中にどのくらいの比率で1 3/8インチ以上の繊維が含まれているかどうかといううことには言及していないわけです。

ちなみに1 3/8インチというのは小数を使って表記すると1.375インチです。

1インチは約25.4ミリなので25.4×1.375=34.925なので35ミリ以上であれば超長綿ということになります。

ここで下の2つの画像をみてみましょう。

これは紡績された糸に含まれる一本ずつの繊維を長いものから短いものの順に左から右に並べたものです。

上のダイヤグラムは比較的直線に近いカーブを描き、下のダイヤグラムは放物線状のカーブを描いています。

端的に言いますと下の方が均一性の高い糸です。

均一性の高い糸を作るためには左から右まで全く水平になるのが理想です。

この右下がりが急であればあるほど糸の均一性は低いです。

糸の番手の均一性が高いほど編地はクリアで綺麗になり、均一性が低いほどスラブのようなムラのある表情になります。

ここで2つの略式モデルを想定してみます。

3本の繊維からなる紡績糸があるとしてその内訳が下記の通りだとします。

1. 45.0mm / 36.0mm / 25.0mm 平均35.3mm
2. 35.5mm / 35.0mm / 34.5mm 平均35.0mm

このモデルを比較すると1.の方が平均繊維長が長くなります。

けれども実際のところ糸の均一性は低くムラ糸に近い形状で、2.は非常に均等に近く均一性の高い糸であることが想像できます。

実際の売り場においてはこのどちらもが超長綿として販売されています。

糸を作る考え方はそれぞれあって、1.2.どちらもそれぞれに特徴のある糸が出来上がり、そのどちらが良いかというのは主観的評価に拠るところとなります。

ちなみに当社のインド超長綿は2.の作り方、ペルー超長綿は1.の作り方に近いです。

ここでもう一度繰り返しますが、超長綿という言葉は繊維一本ずつがそれぞれどのくらいの長さなのかを区分するための用語であり、紡績された糸に含まれる繊維長の平均値を説明する言葉ではありません。

つまり「平均35ミリ以上の繊維が入っている綿糸」=超長綿というのは厳密に言えば間違いです。

「繊維長35ミリ以上の超長綿と呼ばれる繊維が多く含まれた糸を使っています」くらいがちょうど良い表現でしょうか。

もうすこししつこく言うと「繊維長35ミリ以上の超長綿を80%以上含んだ綿糸を使用しています」なんて糸があるとすればこれはかなり綺麗な糸になることが想像できます。

こういう書き方をしているものは見たことがないですが。。。

ともかく、平均繊維長が長くても糸が均一で綺麗なものになるとは限らないので、超長綿=綺麗な綿糸ということは一概に言えないということです。

結局は出来上がったものについて主観的に評価するだけのことなんですが、どうしても人は言葉の持つイメージに影響を受けてしまうのでそこには注意が必要ですよ、というお節介なお話でした。

(自分の文章ながら、読み返してみると実に理屈っぽい。。。)

コメントを残す